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僕がバレエをテーマにした絵を描く上でもっとも大事にしているポイントは、大きく分けて3点ある。
まず、「ダンサーと画家のお互いの芸術性を尊重しあえる関係」があること。
そしてキャンパスに向かうにあたって、
「ダンサーあるいは踊りの内面(心理や踊りの色・空気)を
想像・理解し的確に表現するための努力」をすること。
最後に「対極の調和」を心がけることで
自分なりのオリジナリティーを追求することである。

by 芳賀啓
2009年11月30日発行「バレリーナへの道」vol.80(文園社)


近年の批評より

若さと自由の祝福 欧州・米国ギャラリスト選抜「最高金賞」

顔に喜びが満ち溢れる上品な女性がダンススタジオでレッスンをしている最中に
時間が停止しており、彼女の体を流れるエネルギー、そして若さと自由の祝福を感じることができる。
感情を込めて明快に描かれたその芸術性、自由、そして若さは芳賀啓氏から我々への贈り物である。
エドガー・ドガが描く踊り子を彷彿とさせる作品において、氏は油絵の写実的な技術を効果的に用いている。

by エミール・メモン 
2009年10月31日発行(株)アートクロス「BIFROST」より



「リハーサル風景の輝き」

  芸術家・芳賀啓は、その作品「リハーサル風景の輝き」で、幾人かのダンサーたちが
集う稽古場の明るい雰囲気を、大いなる技量をもって引き出している。
斜めのラインで強調されたポーズのバレリーナが大きなスペースを占めており、
巧みな編成に於ける精度と技能でリハーサル風景が再現されている。
また、稽古に参加している鏡に映った他の人物達を通して、共存するもう一つの世界が示唆されている。
 デッサンは、巧みで色価が注意深く描かれ、この狭いが明るい空間を創る事を可能にしている。
優美な姿勢のダンサーは、爪先立ちの制御されたバランスで、
アスリートのシンコペートされたリズムを喚起する。
このダンサーの表情は踊りによる幸福感を見事に表現し、主題の動きは、
他の参加者の動きが完全に静止した事によってより強調されている。
 これほどまでに精巧かつ完璧で、独特な雰囲気を創造するには真の才能が必要だ。
詩や夢で満たされた神秘的な場所に我々を引き寄せ、鮮やかな立体視によって
それを一新しようと奮闘している芳賀に感謝の言葉を贈りたい。

 by ポール・アンビーユ(フランス)
   
パリ国立高等美術大学卒業
    フランス芸術家協会(ル・サロン)名誉会長
    テーラー財団会長
    国際美術協会副会長
    フランス軍隊公式画家

Art MAISON INTERNATIONAL(アート・メゾン・インターナショナル)Vol.12(12号)より
2008年3月25日初版発行  発行所 株式会社 麗人社  ISBN978-4-86047-100-2/JAN192 0071 058009

「ブレイクタイム」第33回現創展奨励賞  文/磯辺靖
ダンスのレッスンを終えて、休憩する二人の女性の背後を上方から見ている。
会話するように配置された二人のそれぞれのフォルムがしっかりと捉えられている。
特に左側の女性の背中から腰を経由してつま先までの距離感から、この画家の
デッサン力の確かさが強く窺える。それと対照させるように、床には独特の抽象性があり、
そこがこの作品のもう一つの魅力となっている。清潔な色彩の扱いが、
その場の空気までも引き寄せて、二人の間のなごやかな関係性までも
鑑賞者側によく伝わってくる。
■「美術の窓」2008年2月 No.293(生活の友社)より 

「躍動の輝き」2004年 P40号<メラヴィリア国際賞>
10人のダンサーが全員両腕を上げて踊っている。全員女性で、髪型も同じ、衣装も全員が同じもの、藤色を
中心にしたピンク、水色、黄色のコンビネーションのものを着ている。特徴的なことにダンサーたちは皆後ろ向き、
もしくは横向きで、我々観者に顔を見せている物は者はいない。そこには作者の「鍛え抜かれた身体の美しさは、
意外にも背中に表れる」との信条があった。確かにダンサーたちの背中には筋肉がはっきりと認められ、無駄な
贅肉などついていない。ここに作者は「躍動の輝き」を見出したのであろう。また、ダンサーたちが上に挙げた両腕や
衣装の襞には、エネルギーがみなぎり、凛々しさが感じられ、この絵が彼女たちの喜びの一瞬、躍動する歓喜の一瞬を
再現したものであることがわかる。緑と青の天井も、ダンサーたちが上げた両腕がまるで宇宙につながるかのように
感じられるにもかかわらず、違和感を感じさせないのは、作者の色彩と空間表現の工夫に他ならない。
■「美術画報」January 2008年 No.58(アートコミュニケーション)より


"Beyond the Place 07"
2002年

"Carnival in Venice"
2001年

 「Beyond the Place 07」では、大きく伸ばした腕と直角に曲げられた手が踊り手の身体にもましてものをいう。
指先にまで行き届いた神経は、確かにひとつの世界を腕それ自体で出現させており、見るものは身体を通して
腕から手、そして指先へと視線をすすませ、その鮮烈な表現に思わず言葉を無くす。
芳賀啓にとって背景になるべき空間は、人間の心の混沌とつながっていて、それがときに美しい調べを奏でる。
(中略)
 「Carnival in Venice」であるが、ひかりに満ちた男女2人の踊り手の姿が印象に残る。やがてはひかりのなか
深く消えてゆく私たちの人生の、最高の一瞬へと上りつめてゆくその過程にあって、2人の踊りは眩しく、
ときに大きく、裡なる心をとき放ちながらやがて見る人の心のなかへと還ってゆく。
 by 小川英晴 (Hideharu Ogawa)
■「美庵」Bien vol.42 Jan-Feb 2007(藝術出版社)より


リハーサル風景 No.15
2002年

Aria(canter)
2006年

 作品に勢いがあるとでも言おうか、芳賀啓の筆触にある種のスピードを感じるのは、
そこに画家の意識の速度があるからである。一瞬一瞬刻々と移り変わってゆく人体の動きの、
その究極の一瞬をとらえようとする眼差しの確かさが、この画家の大きな魅力になっている。
とらえた一瞬は決して動かず、やがて深い内面への旅を強いる。
(中略)
 『リハーサル風景No.15』では、ある種のリズム感が画面全体を支えている。それに躍動美や軽快感が
心地よいハーモニーを生み出している。新鮮な素材をすばやく調理し、客に差し出す。
それと同様の熟達した技術がこの画家にはあるのだろう。
(中略)
 『Aria(center)』では仮面と向き合い、それを身に付けようとするひとりの男ードイツ・ベルリン国立オペラ劇場
バレエ団の芸術監督であり、プリンシパルダンサーのマラホフ氏ーの濃密な精神が描かれている。
眼差しは仮面の1点へと集中し、そこにすべての想いをそそぎこむ。その集中力をもって、両足でしっかり大地に
立っているといった雰囲気を見事に醸し出している。赤いタイツと背景の黒の生み出す純粋な精神世界が、
男と仮面に深い陰影を与え、謎めいた物語をくっきりと浮かびあがらせている。
 ここでは目に見えぬ不確かな要素は背景にとけ、いま、まさにここにある強い意識だけが
明確な像を結び、その一瞬に全てを賭ける画家の強い意気込みが伝わってくるかのようだ。
 by 小川英晴 (Hideharu Ogawa)
■「美庵」Bien vol.43 2007年春(藝術出版社)より
■「美庵」Bien vol.44 2007年summer 詩人・小川英晴の、この人と語る 対談;芳賀啓 (藝術出版社)
  2ページに渡り、対談あり。  


"Carnival in Venice"
2001年

大地と河 2003年

Fresky 2000年
 「Carnival in Venice」における、光を纏い、颯爽と舞うダンサーの美しい肢体。
俊敏な動きの一瞬の、スローモーションのように流麗なムーブメント。
女性ダンサーの下肢の回転の軌跡が素早く煙り揺れ、ステップの連続性が途切れることなく、
次の動きを予感させる。背景と床面の構図を大胆に配し、男性ダンサーの軸足の力点が強調され、
女性の軽やかな動きが引き立つ。二人の呼吸がぴったりと合う瞬間。緊張感を秘めた
絶妙のバランス。床面に映る下肢の振動、トウシューズから手の指先に到る精緻な描写から、
力の配分、ダンサーの鼓動までもが感じ取れる。

 幽玄なグリーンを基調に、逆光に輝く森と水の妖精を思わせるダンサーが舞い集う「大地と河」。
同題のバレエ演目のワンシーンを描いたものだ。艶やかに反射する身体の輪郭が奏でる透明感が瑞々しい。
暗色を纏った手前に立つダンサーと、後方ダンサーの美しく伸びた足の交錯が
ミスティークな光と陰影を編み出し、鑑賞者は舞台の奥へと誘われる。

 軽快なテンポでレッスンするジュニアダンサーを描いた「Fresky」。
健やかなライトトーンが初々しく、ピュアなホワイトが少女らの可憐さに調和している。
スピーディーな動きをダイナミックにみせ、観る者に迫るように表現された。
作家特有の斜め下からの構図である。
スタジオのバーや、レッドやブルーのシャープなラインがアクセント効果になり、
ソフトな衣装としなやかな人体に対比し、素早い動きと快活なイメージが高らかに響く。


RobinとVictoria 2002年

リハーサル風景07 2000年
 バレエ公演の幕間。アプリコットのような温柔な光に包まれた部屋で歓談する、二人のダンサー。
黄金をまぶしたような亜麻色にしっとり浮かび立つ姿は、双子のバレエ人形のよう。
リラックスしたムードではあるが、束の間の休みの時でさえ、姿勢や足元の所作を崩さない。
その気品のある美しさにうっとりと魅入ってしまう。限られた同系色相のデリケートな
トーン変容テクニックが素晴らしく、後方で談笑する人の気配がすっと遠のき、若い二人が交わす
涼やかな声と、華やかな衣装が擦れる音が届くほどに、鑑賞者に近い表現だ。ドレスのドレーブや光沢感、
シースルーの軽やかな生地のテクスチャー、結い上げた髪の毛からサテンのトウシューズの輝きに至るまで、
隙のない精緻な描写。画面中央の手にした花かごは、他のの色彩とトーンを異にし、二人の存在に求心力を添えている。

 しなやかに反る女性ダンサーの衣装が、窓から降り注ぐ光を浴び、流れ落ちるように輝く。
プロフェッショナルダンサーによるパ・ド・ドウ(二人で踊ること)のリハーサルシーン。作家の記憶に宿る、
金色に輝く衣装の印象から創作された作品だ。いつか聞いたことのあるメロディ、見覚えのあるテクストが、
擦れたタッチとセピアの諧調とのコラージュによって見え隠れし、追憶の情趣が醸し出されている。
それは経験を積んできた円熟したダンサーが放つ空気感なのだろうか。光輝く衣装が、
鍛え抜かれた身体の芸術性を象徴しているようだ。男性ダンサーのダークなシルエットは
女性ダンサーを力強く支え、画面中央で衣装を際立たせる。水平のバーと繊細な光の輪郭線が生む緊張感。
光と陰で一体となった二人のダイナミックで均整のとれた絶妙のバランスに自然と吸い寄せられる。
  文/久野尚美 (以上5点)
■「美術画報」2006年10月 No.55(アートコミュニケーション)より


Nocturne(ノクターン)

 ノクターンは、主としてピアノのための、夜の情趣を表す叙情的な楽曲のこと。まさに言葉通りのロマンティックな
イメージを彷彿とさせる画面が、すぐれた筆力で描かれている。夜の帳のなかに、ピアノを弾く女性の後ろ姿が
幻のように現れ、その背中に月光を受けている。鍵盤に触れる指の動きのしなやかさが、ピアノの音色を暗示している。
夜がもたらす深い静寂が、ピアノの調べを遠くまで響き渡らせるようだ。木々も木立の向こうに覗く満月も、その音色を
聞いているような、不思議な気配が漂う。木々の下方を見ると、たゆたう水面が、月光を浴びている。さらにその上には、
(たぶん女性が奏でる曲の)楽譜が描かれている。モチーフのすべてが女性の弾く曲のイメージに収斂していき、
画面全体で深い音楽性を表している。
 by 功刀知子
■「現代日本の美術 2006」(生活の友社)より
 
 サンフランシスコ芸大4年生の時の作品です。楽譜はコラージュ手法でキャンパスに貼り込み、
その上に油彩で描いています。ピアノの鍵盤は細かいタッチですが、それも油彩で精緻に描きました。
他にもコラージュで楽譜を利用したものが数多くあります。
卒業後、バレエ絵画に集中して音楽を背景にバレエダンサーを描いた作品が多いからです。 by 芳賀啓
■「美術の窓」2006年4月 No.271 (生活の友社)より

 
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